こんにちは、カメラマンhayatobelです。学校写真を10年ほど撮影しております。
例年、新年度が始まると、生徒手帳用の証明写真の撮影が急ピッチで行われます。今回は、こちらについて紹介します。
証明写真の撮り方
- 真顔
- 目を開ける
- 口を閉じる
- 体をまっすぐ
今回の写真は学生証に使う証明写真ですので、真顔です。目を開けて、口を閉じて、体をまっすぐにします。
目を開けることは、生徒さんも意識してくれるので、そんなに問題はないのですが、問題は口と姿勢です。卒業アルバムの個人写真なら、あふれる笑顔を見せて欲しいところですが、残念ながら証明写真では真顔です。
口に関しては、人によるのですが、どうしても開いてしまう人がいます。撮影前に「姿勢を正して、目を開けて、口を閉じてください。」と伝えるのですが、何枚か撮っていると、どうしても半開きのようになってしまう場合もあります。
一度言ったから大丈夫。一枚目の写真でOKだったから大丈夫と安心せず、撮影した写真で、上記のポイントがクリアできているか確認することが大事です。
姿勢に関しては、本人はまっすぐなつもりでも、曲がっている場合がほとんどです(私も含めてですが)。
ですから、体をまっすぐにするのではなく、首を右に10度傾けてといった感じで、ある程度は具体的な数字で言ってあげることが大事です。ポイントは、「ちょっと」とか「少し」と曖昧な言葉で言っても、個人差が大きいので、少しであるならそれが分かりやすい数字で表現してあげるのがいいと思います。
あと、動かしているうちに、よくわからなくなってしまう場合もあります。そういうときは、いったんリセット&リラックスしてもらうのがいいと思います。
セッティング
- ストロボ1灯(コメットなど)
- 電源など、コードの引き回し
- 背景紙の距離・高さに注意
- 露出、ホワイトバランスチェック
- 固定(背景紙、椅子、ストロボ、コード)
- ズーム固定(○○mmなど合わせる、ズーム側使用)
- マニュアル設定(F8、1/125を基準に)
- スクリーン上での位置を確認
学校内で撮影します。空き教室だったり、体育館だったり、ちょっとしたホールだったり、学校や空き状況によって様々です。
教室等の広さによりますが、2セット、もしくは3セットの撮影セッティングを行います。生徒さんの位置、カメラ位置を考えながら、導線を確認します。
他の生徒さんが見ていると、笑ってしまう場合もあるので、できるだけ撮影対象の生徒さん、もしくは次の生徒さんだけ教室に入ってもらうようにします。特に女子生徒の場合、一度笑のツボに入ってしまうと止まりません。導線は、入り口と出口を予め決めておいて、スムーズに交代できるようにします。
この際、電源コードの位置も大事です。足を引っ掛けてしまうと、転んで怪我をしてしまう可能性もありますし、せっかく調整したセッティングが狂ってしまうこともあります。
背景紙の位置や高さ、椅子の位置、カメラの位置などは、業者によって決まっていることが多いので、それに従います。欠席の場合の後撮影もあるので、数値を決めておく方が無難です。
証明写真は、各学校で一斉に開始することが多く、機材も十分でないことが多いです。というわけで、大体は1灯で撮影します。コメットが多い気がします。
露出やホワイトバランスを調整したら、椅子、背景紙、ストロボをガムテープで固定します。特に椅子は、立ったり座ったりすると微妙にずれてくる場合もあるので、固定+バミリテープもしておきます。
カメラの設定は、マニュアルです。F8でシャッタースピードが1/125が基準です。カーテンの閉め忘れにも注意しましょう。太陽光は時間で変わってくるので注意です。
単焦点レンズを使えればいいかも知れませんが、残念ながら学校写真の現場ではあまりお金がない場合も多いです。エントリー機にズームレンズを付けて撮影することもあります。
○○mmなど予め決めておきて、ズームリングを間違って動かさないようにガムテープなどで固定します。望遠側で使うことが多いです。被写体の大きさを調整するときは、三脚ごと前後に動かして調整します。
写真プリントした際に、顔の大きさをできるだけ同じように撮影します。スクリーン上で、どことどこの測距点の間とか、頭はここ、といった感じである程度決まっていると思いますので、それに従います。
2人一度に撮影!?
- やや内向き
- 一人にならないように
- 背の高さを合わせる
上記のように、短期間に数多くの生徒さんを撮影します。撮影のペースとしては、1時間授業(40分から50分くらい)で、2クラスから3クラスを撮影します。
単純計算で、100人の生徒さんを40分(=2400秒)で撮影するとすると、一人当たり24秒です。服装、髪型、姿勢、表情などバッチリであれば、可能ですが、現実的には難しいですよね。
そうなると、2人一度に撮影する場合があります。椅子を二つ並べて、撮影するパターンです。二人同時に見ながら撮影するので、結構大変です。
2人同時にOKになる場合もあれば、1人がなかなかOKにならない場合もあります。使うのは各1枚なので、それぞれにOKでれば、撮影としては問題なしです。
椅子の位置を少し内側にして、露出も関係もあるので、ダブっても、必ず2人で撮影するのがよいです。
撮影する生徒さんの背の高さが同じくらいになるようにするのもポイントです。
エレベータ、ハンドル付きの三脚
撮影の時、三脚を使います。生徒さんの背に応じて、カメラの高さを調整しますので、ハンドル付きのエレベータは必須です。
また、エレベータを使っても問題ないくらい、しっかりした三脚も必要です。ただ、3WAYである必要はないので、最低限で考えると、こちらの三脚があれば問題なしです。
「はい、チーズ!」はダメ!?
これは学校写真独特だと思うのですが、「撮りますよ!はい、チーズ!」とか「3、2、1、はい撮ります!」みたいなものはNGです。
何がNGかというと、時間がかかるからです。逆にいうと、これくらいの時間も節約するくらい、スピード中止で撮影します。
「姿勢をただいて、目をあけて、口を閉じて、はい、撮りました!」って感じで、いつの間にか撮影します。
子供の場合、緊張させずに、できるだけ自然な形でありながら、きちんと証明写真を撮ることが大事です。
ですから、早ければ一組の撮影が10秒かからないくらいです。特に証明写真では、一発目で決めることが大事です。
撮影した写真は、適宜確認して、ちゃんとした写真が1枚撮れていればOkです。
後処理を最小限に
学生証用の証明写真は、納期が短いです。というか、新しい学年は既に始まっているので、できるだけ早くする必要があります。
となると、基本的には撮影時の撮ってだしデータを使います。露出や色温度はもちろんですが、顔の大きさや位置も大事です。
証明写真用に3cm×4cmとか長方形で切りぬく特殊なカッターを使いますが、大きさや位置が違っていると、作業が煩雑になってしまいます。各学校ごとに何百人も生徒さんがいるので、後の作業はできるだけ単純化する工夫がポイントです。
注意事項
- 導線を決めておく
- 予め、制服や髪の毛をチェックしてもらう
- 女性の先生に待機して頂く
- 眼鏡の反射に注意
- 撮影後に確認をする
- ジェネレーター注意!
- 床の色に注意
- 背の順で撮影
- クラス分け(フォルダなど)
- 一人の生徒に時間をかけすぎない
- 子供でも丁寧な対応を
導線を決めておく
生徒さんは、どこから入って、どこで待機して、出口はどこ?は、予め決めておきます。特に撮影用の椅子に関しては、右から入って、左から出る、といった感じで、一方通行で決めておきます。ちょっとしたことですが、時間が大きく節約できます。
制服・髪型チェック
制服や髪形は、どの程度厳しくチェックするのかは、学校さんによって違ってきますが、予め確認してもらいます。ワイシャツの一番上のボタン、ネクタイの曲がり、女子のブラウスやリボンの位置など、校則で決まっている場合もあるので、できる限り、それに沿っていきます。
髪型も予めチェックしてもらい、目がちゃん見えることが必要ですよ!というのを強調しておきます。
女性の先生に待機して頂く
上記の制服や髪形のチェックですが、準備中に生徒さん同志で確認してもらったり、鏡を置いておいたりしますが、それでも十分でない場合があります。また、撮影中に崩れてしまう場合もあります。
自分で鏡を見て直してもらうのもいいですが、時間がかかってしまいます。こんなときには、女性の先生にお願いして、なおしてもらうのが無難です。女性の先生がいら捨らなければ、次の女子生徒に直してもらうようにします。
眼鏡の反射に注意
メガネをしている生徒さんは要注意です。昔ほどではないですが、眼鏡のレンズが反射してしまう可能性があるからです。
対策としては、あごを引いて、若干下向きになってもらい、ストロボ光との角度を調整します。
眼鏡もしっかりと上げてもらいます。ずり下がっていると、老眼鏡をしているおばあちゃんみたいになってしまうので、気を付けましょう。
こちらも、撮影後に必ず確認して、問題があれば再度撮影します。何回か撮影が必要になった場合には、何が問題なのか、ちゃんと説明することで生徒さんも対応がしやすくなります。
撮影後に確認をする
上記でも書きましたが、撮影後に確認をすることが大事です。まずは、目つぶり。これがダメだと、全く使えない写真になってしまいます。
髪の毛が目にかかっていないか。証明写真なので目がちゃんと見えることも大事です。
あとは、姿勢とか、服装とかもありますが、学校によっても基準が若干違ってきます。スピードと品質のどちらを優先するのか(業者としては両方大事にしますが、究極的には、という意味です)ヒアリングしておきます。
何度撮影しても、髪の毛が目にかかっていたり、姿勢が曲がっていたりした場合には、本人に確認してもらうこともあります。自分ではちゃんとできているつもりでも、写真で見るとできてないことは誰でもあることですので。
ジェネレーター注意!
かなりの頻度で撮影するので、ちょっと古めのジェネレーターを使っている場合には、オーバーヒート等に注意です。下を少し浮かせて、床から離すなど、工夫をしましょう。
床の色に注意
教室の床はこい茶色だったり、場合によっては赤系統のタイルの場合もあります。こんな場合は色被りをしてしまう場合があります。反射光を抑えるなど、工夫をしましょう。
背の順で撮影
上記でも書きましたが、生徒さんの背によってカメラの高さをエレベーターを使って調整します。2人同時に撮影する場合もあります。
生徒さんの名簿的には出席番号順の方がいいかも知れませんが、写真撮影としては背の順である必要があります。このことは、前もって伝えておきましょう。
クラス分け(フォルダなど)
クラス分けも大事です。写真の端っこの部分にクラス名の札を入れて置いたり、フォルダ分けするなど工夫しましょう。
もし、これらを忘れてしまった場合には、記憶が新鮮なうちにメモをして置いて、後処理で困らないようにしましょう。
一人の生徒に時間をかけすぎない
学生証の証明写真の撮影は、ポートレート撮影ではありません。決められた一定以上の品質の写真を、できるだけ早くに撮影することが求められます。
生徒さんによっては、どうしても笑ってしまったり、髪の毛が目にかかって、なかなかなおしてくれない場合もあります。
こんなときは、何枚か撮影して、努力を見せる(記録に残す)ことが必要です。そして、「これだと証明写真にならないから、再度撮影させてください」といった形をとることがあります。
もちろん、その場でとれればいいのですが、一人の生徒さんに時間をかけすぎて、全体が遅れてしまうのは問題です。次の時間は普通に授業が入っていますので。
というわけで、ある程度撮って、これ以上は無理そうだったら、次の生徒さんに交代するのも大事です。「ある程度ってどのくらい?」ですが、これは学校さんとの関係や、その場の雰囲気など経験値によるものが大きいので言語化するのは難しいです。
子供でも丁寧な対応を
昔を思い出すと、学校写真のカメラマンは横柄だったとか、態度がでかかったといった記憶はありませんか?現在ではこういった問題に対処して、相手が子供であっても、丁寧な対応が求められます。
「どうしても言うことを聞いてくれない生徒さんの場合はどうするの?」
これに関しては、学校の先生の仕事です。先生を呼んで、対応をお願いします。昔はカメラマンも子供のしつけの役割をになったようですが(聞いた話なので、確かなことは分かりませんが)、現在は撮影業務に集中します。
このあたりのバランスも、子供とのコミュニケーション力と経験値が必要になりますので、言語化は難しいです。
最後に
いかがでしたか?学生証用の証明写真は、比較的短時間で終わって、撮影難度もそんなに高くないと思っていたのですが、いざ書き出してみると、結構ありました。
学校写真のカメラマンは、基本的な撮影スキルに加えて、子供とのコミュニケーション力が必要になってきます。
- 撮影のイメージを決める(確認する)
- 素早くとる
- 確認する(必要があれば、素早く再撮影)
上記を意識して、短時間で何百人も撮影するのは、最初のうちはとても大変でした。でも、カメラマンとして、とても貴重な体験になっていると思います。
例えば、スナップ写真を撮る時であっても、撮りたい瞬間に素早く撮影できるようになってきたと思います。修学旅行とか、観光地で多くの生徒さんを撮影する場合もありますが、こんな時にも、このような経験は生かされていると思います。