こんにちは、カメラマンのhayatobellです。学校写真を10年ほど撮影しております。
今回は、卒業式の卒業証書授与の撮影についてシェアします。ここは、カメラマンとして、最も緊張する撮影の一つだと思っています。
カメラ設定
- 撮影モード:マニュアル(キャノンならM)
- シャッタースピード:1/125~1/160くらい
- 絞り:F6.3~F8くらい
- ISO感度:~800くらいまで
- WB:マニュアル
- AFモード:マニュアル(置きピンを使用)
- ワンショット(キャノンならOne shot AF)等で決めておく
- 記録画質:JPEG Mサイズ
- ストロボ:マニュアル(光量はマニュアルで設定)
- 三脚使用
まず、カメラは2台用意して、同じ設定にします。証書授与の撮影は、全員漏れなく撮影する必要がありますが、途中で止めるわけにはいきません。機材トラブルがあった場合でも、撮影が行われるように、2台以上用意して、一台は肩にかけて、何かあったらすぐに交換しておけるようにしましょう。
撮影モードはマニュアルです。証書授与の撮影は、基本的に同じ場所、同じアングルなど同条件で行われますので、可能な限りマニュアルで設定します。
シャッタースピードは、被写体がぶれない範囲で、背景が落ちないことが条件です。経験的には、1/125~1/160のことが多いです。
絞りは、何かあっても顔にちゃんとピントがくるようにF6.3~F8くらいに設定します。基本的に置きピンで撮影します。生徒さんが立つ位置などにバミリテープが貼られていることが多いですが、本場では緊張して位置にバラつきがでます。ワンショット等でピントを合わせておきますが、余裕をもった絞りにしておくと安心です。
ISO感度は要注意です。最近の撮影では、カメラの性能が上がっていることもあり、ISO感度を上げても問題ないことが多いですが、証書授与に関しては要注意です。
なぜなら、体育館の中には、ストロボ光、ステージ用の照明、蛍光灯、外部からの太陽光など様々な光がミックスされているからです。これらのミックス光の影響を最小限に抑えるためにも、ISO感度はあまり上げない方がいいです。
可能ならホワイトバランスもマニュアルで合わせておきます。ただし、卒業式は午前中で行われることが多く、時間によって光が変わってくるので露出とともに要注意です。
AFモードは、マニュアルもしくは、ワンショット等で親指フォーカスを使用します。一番のリスクは、ピントの抜けです。これを避けるためにも、置きピンを使います。
記録画質は、配布するサイズ(通常はMサイズ)に耐えうる最小のサイズ、もしくは少し余裕を持ったサイズです。撮影後の処理に負担をかけないためにも、設定等を撮影時に追い込んでおき、JPEGで撮影します。どうしても不安な場合だけRAWも合わせて撮影することもありますが、あくまでも抑えです。
ストロボは直あてです。バウンスは使いません。体育館の中ではバウンスする壁や天井もない(離れている、もしくは白ではない)ので。このとき注意するのは、白とびしないことと、背景が落ちすぎないこと、そして証書授与中も光量が安定していることです。これらを考慮して、光量を調整します。
三脚は使用する人としない人がいます。ステージの影などで三脚を立てられる場合は、使った方が楽です。フレーミングも統一できるし、置きピンを使っているからです。状況によって三脚が使いずらい場合は手持ちで撮影しますが、短時間で何百人も撮影するので、結構疲れます。最初から最後まで安定して撮影できるよう、持ち方や姿勢等を工夫しましょう。
撮影準備とシミュレーション
撮影前の準備は、とても重要です。なぜなら、卒業式が始まってしまったら、流れに従うしかないからです。
1)撮影位置の確認
2)撮影アングルの調整
3)露出等、カメラの調整
4)テスト撮影
まずは、撮影位置の確認です。これは、多くの学校では毎年この位置から撮影しています、という慣例がありますので、それに従うのが無難です。いい写真が撮れるからと言って、例年と違う位置で撮影していると、場合によっては親御さんからクレームが入る場合があります。優先順位を考えて、先生と相談します。
次はアングルの調整です。ポイントは、証書授与のタイミングで生徒さんがちゃんと写せること。証書を渡す校長先生の位置や、介助の先生の位置、そして花の位置などを確認し、撮影に支障がないようにします。もし、被ってしまいそうなら、早めに先生に相談しておきます。
次はカメラの調整です。上記のカメラ設定に従って、調整を行います。何mm附近での撮影か確認し、予備カメラも含めてズーミングに余裕があることを確認しておきます。
最後は、テスト撮影です。予行練習を行っている場合は、その状況を撮影します。予行演習をやっていなければ先生にお願いして、実際の動きを行ってもらい、カメラ設定を含めた最終調整を行います。
式典の当日は、先生も忙しいので、早めに現場入りして、このあたりの調整を済ませておくことが大切です。
撮影のタイミング
1)校長先生の前に立ったとき
2)卒業証書に片手をかけたとき
3)受け取った後
証書授与のタイミングは、大きく分けて三カ所です。使用する写真は1カットで、一番優先順位が高いのは2)卒業証書に片手をかけたときで、1)と3)は抑えです。
1)校長先生の前に立ったときは、卒業証書をもらう前に、バミリテープの位置に立って、校長先生の方を見ます。問題なければ、ここできおつけをして、顔を上げて止まるので、この瞬間に撮影しておきます。ただし、ここでの撮影がストロボに負担をかけて、2)の瞬間で光量が安定しない恐れがある場合は、撮影しません。式典の影響を最小限にするため、撮影枚数を抑える場合にも撮影しません。
2)卒業証書に片手をかけたときは、一番大事なシーンです。なぜ、両手をかけた瞬間ではないのか?と思うかも知れませんが、片手をかけた瞬間にシャッターを切ることによって、結果として両手をかけた瞬間の写真が撮れるからです。シャッター速度は、このときにブレが目立ちすぎないようにすることがポイントです。ストロボの光量が安定する場合には、このときに2枚連続で撮影する場合もあります。2枚撮影しておくと、瞬きをした場合のバックアップになります。
3)受け取った後は、1)、2)が撮れなかった場合に撮影します。ずっと下を向いて顔が見えなかったり、いきなり両手を出してしまい、タイミングが計れなかった場合など、想定外の状況が発生した場合のバックアップです。
一人目の生徒さんのとき、卒業証書の内容を読み上げるので、撮影位置やフレーミングなど、出来上がった写真を見て確認しておきましょう。
撮影中の注意事項
1)式典の邪魔しないこと
2)生徒さんの顔が認識できること
3)特別対応を確認する
1)式典の邪魔しないことが必須です。卒業式は、学生さんの最後の大切な行事となります。できるだけ気配を消して、速やかに撮影します。
2)生徒さんの顔が認識できることは、結構難しい場合があります。これを考慮して、上記で1)から3)のタイミングで撮影していますが、どうしても顔が認識できない場合もでてきます。その場合は、ホームルームの時などに撮らせてもらいます。髪の毛の長い生徒さんや、下を向きがちの生徒さん、極端に緊張していて動きがぎこちない生徒さんには注意しましょう。
3)特別対応を確認する。これは、特別支援級や登校できていなかった生徒さんなどです。檀上で証書授与が難しい場合には、席に行ったり、舞台裏で撮影することもあります。このタイミングで速やかに動いて撮影します。このとき、ほとんどがマニュアル設定になっているカメラを違った状況に合わせてすばやく変更する必要があります。
集合写真の準備をしておく
ほとんどの卒業式の撮影では、証書授与と集合写真の撮影のみで、スナップの撮影はありません。証書授与が終わったら、集合写真に向けて準備をしておきましょう。スナップの撮影がある場合は、そちらの準備をします。どちらも音を立てないように、そおっと行います。
集合写真の撮り方は、こちらを参考にしてください。
最後に
当然ですが、卒業式はどの学校も気合が入っています。生徒さんはもちろん、先生も親御さんも。ですから、カメラマンもしっかり準備をして万全の態勢でのぞみましょう。
体育館の舞台裏で待機していることも多く、時期的にもかなり寒いです。事前いトイレに行っておいたり、カイロを用意して寒さ対策をするなど、しておきましょう。あと、スリッパではなく、上履きを持参した方がいいです。足音も結構気になります。
何回か撮影をさせて頂いている学校さんだと、何となく覚えている生徒さんもいたりして、こちらも感無量になります。初めて撮影させて頂く学校さんでも、歌や言葉を聞いていると感動したりします。毎年何回もこの場面に立ち会わせて頂いていることに感謝です。